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米国RAPID計画

米国RAPID計画とは,米国エネルギー政策法に基づき,1993年から6年間,約6,000万ドルの費用をかけて,電磁界に関する調査研究と広報活動を実施した国家プロジェクトです。
(RAPID=Research and Public Information Dissemination;研究と公衆への情報伝達)

経緯

1979年,米国の疫学者ウェルトハイマー氏とリーパー氏が,電力線近傍に住む子供の白血病が多いとする疫学研究を発表して以来,多くのマスメディアがこの問題を取り上げるようになり,電磁界の健康影響に関する社会的懸念が高まりました。
このような背景から,米国議会は,電磁界と人の健康影響との因果関係に決着をつけることを目的に,研究プロジェクトの実施を決定しました。

プロジェクトの目的

1. 電磁界の健康影響に関する生物学的研究と,電磁界の測定・特性の解明・管理などを目的とする工学的研究を通じて,健康影響の調査に焦点を絞った研究の実施

2. パンフレットの作成,広報活動,一般大衆とコミュニケーションをとるための電磁界情報電話サービスを通じた,情報の収集編さん及び伝達

3. 健康影響評価,電磁界曝露から生じる危険性の評価に対する証拠の強さを評価するための調査データの分析

RAPID計画における健康影響評価の流れ
電磁界の健康影響に関する疫学研究および動物,細胞研究の結果

RAPID計画のもとで,電磁界の健康影響について評価した3種類の報告書が公表されています。

ワーキンググループ報告書

米国RAPID計画の一環として,1998年6月,専門家により構成されたワーキンググループにより,これまでに報告された電磁界の健康影響に関する研究結果について再評価が行なわれ,同年7月に報告書の全文が公表されました。

ワーキンググループ報告書

◇報告書の結論

電磁界を「発がん性がある可能性がある(グループ2B)」に分類することが,安全側の公衆衛生的判断である。

【説明】

発がんの可能性の程度分類を目的として,国際がん研究機関(IARC)の発がん性評価手法を用い,メンバーの投票により結論を導きました。
その結果,電磁界の健康影響について,多くの生物学的研究(動物実験・細胞実験)では否定的な結果が示されたものの,小児白血病および成人の慢性白血病に関する疫学研究結果を重視し,電磁界を「発がん性があるかもしれない(Possible Carcinogenic to humans)」に分類することが,安全側の判断であるとしました。

《国際がん研究機関(IARC)の区分と今回の投票結果》

分類 分類の説明 IARCの分類事例 今回の投票結果
グループ1 発がん性がある
Carcinogenic to humans
タバコ,酒,ダイオキシン 0
グループ2 A おそらく発がん性がある
Probably Carcinogenic to humans
紫外線,ディーゼル排気 0
B 発がん性があるかもしれない
Possible Carcinogenic to humans
コーヒー,漬け物,わらび 19
グループ3 発がん性については分類できない
Not classifiable as to its Carcinogenic to humans
コレステロール,お茶,カフェイン 8
グループ4 おそらく発がん性がない
Probably not Carcinogenic to humans
カプロラクタム 1

このような結論に対して,一部には,電磁界とがんとの関連性が認められたとする意見もありましたが,ワーキンググループのギャロ委員長は,プレスリリースの中で,

本報告書はリスクが高いことを示すものではない。電磁界のリスクは他の健康リスクと比べれば,かなり小さいものである。不確実性を減らすため,さらなる研究が必要である。

と補足しています。

全米科学アカデミー(NAS)のRAPID計画評価報告書

全米科学アカデミー(NAS)は,1999年5月,米国RAPID計画の活動と研究結果に対する評価報告書を公表しました。
これは,RAPID計画の実施を定めた1992年のエネルギー政策法に基づき,RAPID計画の下で実施された研究の技術的評価や情報公開に関する勧告を目的としてまとめられたものです。

全米科学アカデミー(NAS)のRAPID計画評価報告書

◇報告書の結論

RAPID計画の結果は,電気の使用が公衆への健康障害を有することを支持していない。

【説明】

全米科学アカデミーは,RAPID計画の下で実施された生物学的研究について,ほぼ全体にわたって電磁界の健康影響に否定的な結果であったとし,

技術的な観点からは,RAPID計画は,商用周波磁界が公衆の健康に関し,重大な悪影響を持つことはありそうにないという結論を強めた。

との見解を示しました。

また,全米科学アカデミーは,1997年,過去17年間に公表された500編以上の研究論文を詳細に評価し,その成果を取りまとめた報告書において,「電磁界への曝露が人の健康への障害となることを示していない。」との見解を示していますが,今回の報告書においても,

RAPID計画の知見は,1997年の全米科学アカデミーの評価と異なるものはない。

としています。

さらに,RAPID計画のワーキンググループ報告書において,国際がん研究機関(IARC)の発がん性分類が採用されたことに対し

グループ2(発がん性があるかもしれない)に分類したことは,その基本となる研究によって支持されていない結論を公衆に持ちこむ結果となった。

として,一般公衆に正しく理解されなかったことを「見劣りする結果であった」と批判しています。

米国環境健康科学研究所(NIEHS)報告書

米国環境健康科学研究所(NIEHS)は,1996年6月,米国RAPID計画の最終報告書となるNIEHS報告書を公表しました。報告書は,同時に米国議会に提出されました。

米国環境健康科学研究所(NIEHS)報告書

◇報告書の結論

電磁界の曝露が,何らかの健康リスクを提起するということを示唆する,科学的証拠は「弱い」。

【説明】

NIEHS報告書では,これまで行われてきた電磁界の健康影響に関する生物科学的研究や疫学研究の結果について,以下のとおり評価しました。

<生物学的研究の結果に対する影響>

動物や人や細胞で行われたほとんどのメカニズムの研究における全ての実験的な証拠は,環境レベルの極低周波電磁界の曝露と生物学的作用や病状変化との間の原因となる関連性を支持できていない。

<疫学研究の結果に対する評価>

個々の研究からの支持は弱いが,曝露測定のいくつかの方法に関して,曝露増加に伴ってほぼ一貫したわずかなリスク増加のパターンを示している。

このような評価結果から,「電磁界の曝露が完全に安全であると認められないものの,真に健康に危険である確率は小さい。」との見解が示されました。
また,本報告書では,磁界曝露の低減について,以下のとおり提言しています。

積極的な規制への考慮を正当化するには不十分である。しかし,実質的には米国の全ての人は電気を使用しており,極低周波電磁界に日常的に曝露されていることから,曝露低減に向けた方法を公衆と規制された社会の両方に教育することを継続的に強調するような,受動的な規制活動は認められる。

このように,報告書では,法的な規制値の導入を否定しているものの,電磁界の健康影響に関する社会的懸念への配慮を求めています。

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