Energia 中国電力株式会社 中電病院

代表 Tel(082)241-8221

耳鼻咽喉科

耳鼻咽喉科の直通電話番号

(082)541-4016(開院日の8時30分~17時)

耳鼻咽喉科の外来分担表

 
午前 藤井 藤井 藤井 藤井 藤井
午後 特殊検査
外来手術
(予約制)
藤井
(但し,奇数月の第3火曜の午後は手術のため休診)
(手術) 藤井 特殊検査
外来手術
(予約制)
  • 午前受付・・・8時~11時
    診療開始・・・9時~
  • 午後受付・・・11時10分~15時30分
    診療開始・・・14時~

耳鼻咽喉科医師のプロフィール

氏名ふりがな 役職 専門領域 資格
藤井 守
藤井 守ふじい まもる
部長(嘱託社員) 鼻科学・平衡神経科学 日本専門医機構認定 耳鼻咽喉科専門医
日本めまい平衡医学会認定 めまい相談医

加藤 秀範 かとう ひでのり

非常勤    

当院  耳鼻咽喉科の専門分野

鼻・副鼻腔炎に対する内視鏡手術(副鼻腔炎, ちくのう症や鼻づまり, 鼻水の改善)

  中電病院  耳鼻咽喉科では, 鼻中隔彎曲症, アレルギー性鼻炎, 慢性副鼻腔炎(いわゆる, ちくのう症や鼻茸, ポリープ)に対して, 内視鏡を用いた副鼻腔手術(Endoscopic Sinus Surgery:ESSとも呼びます)を多く手がけています。副鼻腔に問題がある場合, その手前の鼻腔の形態も整えて空気の流れを良くして, 鼻腔と副鼻腔との間の換気障害を改善しなければ術後の長期の安定性は保てないと考えています。そのため, 副鼻腔に対する手術に加えて, 鼻中隔彎曲症やアレルギー性鼻炎や肥厚性鼻炎による下甲介粘膜の腫れに対する鼻腔内形態の矯正手術(鼻中隔矯正術+粘膜下下甲介骨切除術+後鼻神経切断術[翼突管神経切断術とも呼びます]→後ほど説明します)も併せて行い, 換気を回復させることで良好な成績を上げています。換気を改善させるので, 鼻づまりに対しても改善効果が期待できます。一般的に耳鼻咽喉科医師1名勤務の施設では扁桃・アデノイド手術が手術件数としては最多になるものですが, 下記の表のように2022年度は26件の内視鏡下鼻副鼻腔手術が行われ(重大な合併症や術後感染は起こっておりません), 扁桃・アデノイド手術を上回っています。これも当科の専門性を反映する結果と思われます。
  ただ、副鼻腔炎の特殊型の好酸球性副鼻腔炎については、手術難易度が高度であること+原因となる重度のアレルギー体質の改善は手術では達成できないこと+長年にわたる経過観察が必要であるから、連携機関の高次医療機関へ治療を依頼しています。

  2017年度 2018年度 2019年度 2020年度 2021年度 2022年度 2023年度
10月末まで
内視鏡下鼻・副鼻腔手術 130件 174件 146件 103件 39件 26件 9件
扁桃/アデノイド手術 12件 9件 4件 13件 6件 3件 0件
副鼻腔手術における当院の独特な手技上の工夫
中甲介の縫合固定による副鼻腔への換気路の確保

  鼻腔と副鼻腔の境に中甲介という構造があります。副鼻腔炎が慢性化している人では, この中甲介が外側に寄り気味で鼻腔と副鼻腔の境が狭くなって換気が悪い状態にある人が多いです。また, 手術中に内側へ寄せても, 術後に外側へジワッと戻っていくことが多々あり, こうなると再び鼻腔と副鼻腔の境が狭くなって換気が悪くなり, 副鼻腔炎が再燃しやすくなります。
  従来, 中甲介を適正位置へ保ち, 術後変化を防ぐ有効な手段がありませんでした。しかし, 欧米の一部の施設では中甲介を鼻中隔(鼻の空間を左右に分けている真中の仕切り)に糸で縫いつける方法が行われています。狭く深い鼻腔の中での縫合操作は意外に難易度の高い操作のため, 日本国内では殆ど行われていません。当科では2006年度途中よりこの手技を取り入れ, 鼻腔形態の保持および副鼻腔炎の術後経過の安定に大きな成果を上げています。

最近の手技上の工夫点

粘膜下下甲介骨切除術や後鼻神経切断術(翼突管神経切断術):
アレルギー性鼻炎などによる鼻づまりに対する手術

ア)まず,厚い下甲介粘膜の前縁に切開を加える

粘膜下下甲介骨切除術や後鼻神経切断術(翼突管神経切断術)

イ)そこから粘膜と,下甲介骨の間を後方まで剥離

粘膜下下甲介骨切除術や後鼻神経切断術(翼突管神経切断術)

ウ)下甲介構造の芯となっている下甲介骨を除去,下甲介粘膜の容量の減量
必要時は,剥離部の後上方で後鼻神経の鼻腔への進入部を確認して,その神経を処理

粘膜下下甲介骨切除術や後鼻神経切断術(翼突管神経切断術)

カ)閉創

粘膜下下甲介骨切除術や後鼻神経切断術(翼突管神経切断術)

鼻中隔矯正術:鼻の真ん中の仕切りの歪みを修正する手術

標準的な術式

1)手術前の状態
患者さんの鼻中隔を正面から見た図です。
向かって左から, 粘膜→芯となる軟骨/骨→反対側の粘膜の3層構造で構成されます。
芯となる軟骨/骨の歪みが鼻中隔彎曲症の原因です。
この芯は前方では軟骨, 後方では骨で構成されています。

2)鼻の穴の中で鼻中隔の片面粘膜を切開します(外に傷はできません)。

3)粘膜と軟骨の間を剥離していきます。
切開部を取っ掛かりとして, 粘膜と軟骨/骨の間を後方へ向けて剥離していきます。

3)片面の剥離が終了したら, 前方で軟骨にも切開を加えます。そこを手掛かりとして反対側の粘膜も剥離していきます。
片方の剥離が終わったら前方で浅く軟骨に切開を入れます。
ここから反対側の粘膜下に入り、同様に粘膜と軟骨/骨の間を後方へ剥離していきます。

4)彎曲部を越えて両面粘膜が剥離されるまで後方へ剥離していきます。
下図 (a)は両方の剥離が完了したところです。
次いで、彎曲の原因となっている軟骨/骨を削って取り除きます。
下図 (b)は彎曲部分の軟骨/骨を除去し終わったところです。

5)いったん剥がした両側の粘膜がぴったり付くように両鼻内にガーゼを詰めて手術終了です。
詰めたガーゼは術後2日目に取り除きます。

スギ花粉症などのアレルギー性鼻炎で, 特に重症の方に対する手術的治療
(鼻中隔や後鼻神経に対する手術などで鼻づまり, 鼻水の改善)

1.鼻中隔矯正術+粘膜下下甲介骨切除術や後鼻神経切断術(翼突管神経切断術ともよびます)

  季節性の花粉症や, 通年性のアレルギー性鼻炎の程度が強くて, 外来でのレーザー治療の効果が乏しかった方, あるいは鼻腔内が狭くてレーザー治療が困難な方に対する治療法です。入院での手術となりますが, 上述した鼻中隔矯正術+粘膜下下甲介骨切除術が有効です。鼻中隔という鼻の中で左右を分けている仕切りの左右への歪みが修正され, アレルギーで腫れた下甲介粘膜の処理も十分に行われるので, 鼻づまり, 鼻汁(鼻みず), クシャミというアレルギー性鼻炎の3大症状全てに効果を期待できます。
  その中でも特に症状の強いアレルギー性鼻炎に対しては, 先ほどの鼻中隔矯正術+粘膜下下甲介骨切除術に加えて, 内視鏡を用いた後鼻神経切断術(翼突管神経切断術とも呼びます)という手技を併せて行うことで, さらに高い効果を期待できます。
  後鼻神経(翼突管神経)へのアプローチは粘膜下下甲介骨切除術に引き続いて行う下甲介経由のアプローチが教科書的なものです。しかし, 症例によっては奥深くて神経の同定確認, あるいは神経確認後の手術操作が困難な場合があります。当科では, 従来法よりも経路の短い中鼻道経由のアプローチも併用することで神経の同定確認及び手術操作が十分な視野の元で確実に行えるようになりました。

2. レーザー治療

  ◎新型コロナウィルスの感染対策のため,当面の間はレーザー治療の前日に核酸増幅検査で陰性を確認した上で行います。コロナ禍以前の時期よりも通院と検査の手間が増えますが,ご理解とご協力のほどよろしくお願いいたします。

  スギ花粉症に代表されるアレルギー性鼻炎の患者さまには, 日帰りで施術可能な炭酸ガスレーザー照射手術という手段もあります。ただ, 鼻中隔という鼻の中で左右を分けている仕切りの左右への歪みが強い場合や, アレルギーの程度が強くて下甲介粘膜の腫れが高度であると, レーザー治療用の器具を奥まで進めることができません。

  その場合は, 先にお話しした鼻中隔矯正術+粘膜下下甲介骨切除術や後鼻神経切断術(翼突管神経切断術)をお勧めしています。

  • ・レーザー治療は何故効くの?
      レーザー光線を照射することでスギ花粉などの原因抗原に敏感になっている粘膜層のみを薄く焼いて(μmの単位です)落とします。その後再生した新しい粘膜はスギ花粉に対する敏感さを余り持っていないのでクシャミや鼻水といった症状が和らぎます。ただ, ごく表層にしか作用しないので, 腫れた粘膜をしぼませる効果には乏しく, 鼻づまりに対する効果は余り期待できません。

  • ・花粉症の時期に行うの?
      スギ花粉症の場合, 花粉が飛散しはじめる頃にはレーザー照射手術の傷が落ち着いていることが望ましいです。そのため, レーザー照射手術自体は前年の晩秋~初冬に行うのが望ましいと思われます。

  • ・すぐ, 出来るの?
      日帰りとは言っても「手術」ですので, 通常の外来に受診していただき鼻内の状態や他の合併疾患, 薬剤アレルギーの有無などを確認させていただいてから, 手術日の予約を取らせていただくことになります。

内耳由来のメマイ疾患

  メマイの原因は大まかに分けると内耳の障害, 中枢性(脳)の障害, 自律神経系の障害に分けられます。
 当科では問診ならびに諸検査で, 患者さまのメマイの原因が上記の3つの何処にありそうか?を調べます。おおまかな割合では, メマイの中で内耳の問題である可能性は約1/3であり, そうであれば当科で治療も行います。中枢性や自律神経系の障害と思われる場合には脳神経外科や脳神経内科専門医に紹介させていただきます。この場合, 当院には該当診療科常勤医師がないため他院への紹介となります。
  また, 調べても原因がはっきりしないものも現実には3割程度あります。

  内耳性メマイの中では良性発作性頭位眩暈症という疾患が比較的多いです。本来, 卵形嚢という場所に存在している耳石の一部が移動して, 半規管内に迷入したために起こるメマイです。これに対しては広島県内でも早くから頭位療法という理学的療法を取り入れています。全例に適応という訳ではありませんが, 患者さまの状態に応じて後半規管型にはParnes法やSemont法, 外側半規管型にはLempert変法や頭部傾斜捻転法という手技を行っています。頭部傾斜捻転法は当科のオリジナル法であり, これらの成果はすでに広島医学誌, 耳鼻咽喉科臨床誌, 耳鼻咽喉科頭頸部外科誌, 平衡神経科学会誌, Acta Otolaryngologica誌といった専門学術雑誌に11編の論文として掲載されています。