当社経済研究センターでは,中国地域における産業空洞化の現状と課題を把握するため,中国地域における企業の海外進出の状況とその影響などについて,平成15年度にアンケート等を含む調査・分析を行いました。調査,分析結果は以下のとおりです。
【調査・分析結果のポイント】
| ・ |
中国地域における海外進出企業の割合は,全国に比べ低めとなっている。 |
| ・ |
繊維・衣服や電気機械などの業種において,海外生産比率が高い。 |
| ・ |
海外進出先は,現状・今後の予定ともに圧倒的に中国のウェイトが高い。 |
| ・ |
海外生産の目的は,「生産コスト削減」がもっとも多く,次いで「海外市場の開拓」となっている。 |
| ・ |
高付加価値品へのシフトや高コスト構造の是正が,今後の重要な課題となっている。 |
|
【調査・分析結果の要旨】
| ● |
中国地域における製造業の海外進出の現状
中国地域の製造業においては,海外生産を行っている企業の割合は17.4%と,全国の20.8%に比べやや低めです。
業種別には,繊維・衣服や電気機械が主に委託生産の形で海外展開を行っており,海外生産を行う企業の割合が2割を超えています。企業規模別には,大企業になるほど海外生産を行っている割合が高く,形態も直接投資によるもののウェイトが高い傾向が見られます。
一方,小規模な企業ほど委託生産など自らが海外に拠点を構えない方法をとっています。
海外生産の理由としては,コスト削減をあげる企業が多く,進出先も安価な労働力を利用できる中国などのウェイトが高い傾向があります。 |
|
(図1)中国地域における製造業の海外生産状況
 |
| ● |
他企業の海外進出による影響
他企業が海外進出したことによる影響については,製品納入先企業の海外進出による影響度がもっとも高くなっており,「大きな影響あり」「やや影響あり」の合計で3割ほどとなっています。
原料購入先や直接的には取引関係のない企業の海外進出による影響はそれほど大きくはありません。
「製品納入先がなくなった」だけでなく「製品の価格引下げ圧力が高まった」といった影響も出ています。また,海外進出によって国内拠点を縮小する動きも出ており,このことは近年の事業所数の減少にも現れています。 |
(図2)取引関係別に見た他企業の
海外進出による影響
 |
|
コスト競争力を高めるために海外生産を行っている企業が多いため,国内経済の活性化のためには国内の高コスト構造の是正や,競争力のある高付加価値品へのシフトなどを進めていく必要があるでしょう。 |
|
【調査,分析結果の概要】
1.海外進出の現状
中国地域の製造業において海外生産を行っている企業の割合は17.4%であり,全国の20.8%(2002年度の製造業における海外子会社保有企業の割合[経済産業省])に比べ低めです。
海外進出企業における現在の海外生産比率(海外事業での生産額/企業全体の生産額)を見ると,繊維・衣服が非常に高く,次いで輸送機械,電気機械となっています。なお,繊維・衣服において全国値との乖離が大きいのは,全国の統計では海外生産に含まれない10%未満の直接投資や委託生産なども,当地域のアンケートではすべて対象としていることによるものと思われます(図3)。この結果,当地域の回答企業における海外生産比率の単純平均値は20.8%となっており(全国は2002年度見込値で44.4%[経済産業省],ただし海外生産比率の単純平均ではない),全国に比べ低い水準といえます。
また,海外生産企業の主要進出先としては,中国が圧倒的に高く,昨今の中国への直接投資ブームをそのまま反映したような形となっています。また,その他アジアのウェイトが高いのは,自動車メーカーなどによるタイやマレーシアなどASEAN諸国への海外進出がこれまで比較的多かったことによるものです(図4)。
 |
(注)
| ・ |
全国の海外生産比率は「現地法人売上高/国内法人売上高」であり,中国地域の海外生産比率とは厳密な比較はできない。 |
| ・ |
全国の数値は経済産業省「海外事業活動基本調査」による。 |
|
|
2.海外進出の目的
海外生産を行う目的としては,やはり「生産コストの削減」という回答がもっとも多くなっています。次いで,「海外市場の開拓」となっており,「他企業の海外展開への対応」「親企業などからの要請」といった回答は比較的少なめとなっています(図5)。
ただ,主目的としては他企業の海外展開への対応や親企業からの要請などであったとしても,その結果として生産コスト削減が達成できることも多いため,「生産コスト削減」の割合が高めに出ているという事情もあることに注意する必要があります。
また,海外生産の目的別に進出先地域の割合を見ると,中国やASEAN諸国については生産拠点の設置,労働力の確保などを目的とした進出が中心であることがわかります。中国地域の企業については,全国以上に労働力を目的とした中国への進出が目立っています(表1)。
現段階では,市場開拓を目的とした進出先としては,中国よりもアメリカなどの割合が高いものの,今後は,中国の巨大な市場への参入を狙った海外生産が増えてくることも考えられます。
(表1)海外生産の目的別に見た進出先地域の割合
|
中国 |
香港 |
NIES |
ASEAN |
アメリカ |
その他 |
計 |
| 市場 |
12.2 |
5.0 |
16.3 |
18.2 |
18.0 |
30.3 |
100.0 |
| 生産 |
23.4 |
2.1 |
12.8 |
27.2 |
15.9 |
18.6 |
100.0 |
| 情報 |
4.9 |
7.8 |
15.4 |
7.5 |
32.4 |
32.0 |
100.0 |
| 労働 |
22.3 |
2.6 |
19.0 |
43.5 |
3.7 |
8.9 |
100.0 |
| 流通 |
11.5 |
10.1 |
15.9 |
11.9 |
19.8 |
30.8 |
100.0 |
|
中国 |
香港 |
NIES |
ASEAN |
アメリカ |
その他 |
計 |
| 市場 |
11.7 |
3.9 |
15.5 |
20.4 |
28.2 |
20.4 |
100.0 |
| 生産 |
28.6 |
1.1 |
11.0 |
25.3 |
16.5 |
17.6 |
100.0 |
| 流通 |
6.7 |
6.7 |
11.1 |
20.0 |
28.9 |
26.7 |
100.0 |
| 労働 |
30.0 |
2.5 |
15.0 |
37.5 |
7.5 |
7.5 |
100.0 |
| 情報 |
6.1 |
9.1 |
21.2 |
9.1 |
39.4 |
15.2 |
100.0 |
(資料)東洋経済新報社「海外進出企業総覧2003」
3.海外生産を行わない理由
中国地域における企業の多くは海外生産を行っていませんが,その理由として最も大きいのは「海外生産を行うほどの規模ではない」という回答です。これは,企業規模が小さく海外展開を行うほどの余力のない企業が多いことによるものとみられます。次いで「国内のほうが受注変化に柔軟に対応できる」となっていますが,下請け企業などについては,取引先のほとんどが国内企業であるため,海外に出て行くメリットが少ないことを示しています。
一方「国内取引のしがらみ」などの回答は少ないといった特徴があります。
|