原子力発電のしくみ
原子力発電のしくみ
原子力発電のしくみ
原子力発電は,原子炉の中でウランが核分裂する時に出る熱で水を沸かして蒸気を作り,その蒸気の力でタービンを回し,連結している発電機で電気を起こします。タービンを回し終えた蒸気は,復水器で冷やされて水に戻り,再び原子炉へ送られます。
水を沸かして蒸気に変えて,蒸気の力でタービンを回して発電するというしくみは原子力発電も火力発電も同じです。
核分裂のしくみ
原子力発電の燃料はウランです。ウランには種類があって,核分裂しやすいもの(ウラン235)と,しにくいもの(ウラン238)があります。
天然ウランには,核分裂しやすいウラン235は,わずか0.7%しか含まれていません。
すべての物質はたくさんの原子で構成されています。
原子は原子核と電子でできており,ちょうど太陽のまわりを地球や火星が回っているように,電子が原子核のまわりを回っています。
さらに原子核は,たくさんの陽子と中性子から構成されています。
<原子の構成>
ウラン235の原子核に中性子があたると,陽子と中性子を結びつける力が不安定になり核分裂が起きます。この時,膨大な熱エネルギーが発生し,同時に2~3個の中性子が放出されます。この中性子がまた他のウラン235を核分裂させるのです。次々とくり返されるこの反応を核分裂の連鎖反応といいます。原子力発電は,核分裂の連鎖反応を利用して蒸気をつくり発電しています。
<核分裂のしくみ>
この連鎖反応を継続的に起こし,発電に適した量の熱エネルギーを得るために,原子炉では,以下のとおり核分裂の速さや熱エネルギーの発生をコントロールしています。
- 核分裂で発生した中性子のスピードを落として次の核分裂を起こしやすくする「減速材」
- 核分裂が必要以上に起こらないように,余分な中性子を吸収する「制御棒」
- 核分裂で発生した熱を取り出す「冷却材」(冷却材が水の場合,取り出した熱が,水蒸気の形で発電機のタービンを回す力になる)
原子爆弾と原子力発電の違い
原子爆弾と原子力発電はどちらもウランを利用しています。しかし,この二つには大きな違いがあります。
原子爆弾は一度に大量のエネルギーを発生させるため,核分裂しやすいウラン235の割合を100%近くまで濃縮し,一瞬で核分裂させ爆発させます。
<原子爆弾の場合>
原子力発電は少しずつ長期間にわたってエネルギーを取り出すため,核分裂しやすいウラン235の割合を3~5%に濃縮し,核分裂を連鎖反応させます。また,中性子を吸収する制御棒で核分裂の調整を行います。
<原子力発電の場合>
自己制御性
日本の原子力発電の原子炉(軽水炉)は普通の水(軽水)を入れています。
水は核分裂によって発生した熱を取り出す冷却材としてだけでなく,減速材としての働きもあります。
核分裂によって発生する中性子の速度は非常に速いため,速度を遅くしてやると,次の核分裂が起こりやすくなります。この速度を遅くする役割を減速材である水が担います。
原子炉の出力が上昇すると,水が沸騰し蒸気になって気泡(アワ)となり,中性子は減速されにくくなります。その結果,核分裂を起こす速度の遅い中性子が減少するので,核分裂の連鎖反応が自然に抑制され,出力の上昇が抑えられます。
<原子炉固有の安全性(自己制御性)>
万が一何かの原因で核分裂の量が急に増えても,燃料の特質を利用し,自然に核分裂が抑えられて,設定した一定の出力に安定するような性質が備わっています。
多重防護
ウラン燃料は,運転中だけでなく運転を止めている時も,放射線と熱を出し続けるため,徹底した安全確保の取り組みが必要です。このため,原子力発電所では,「多重防護」の考え方を取り入れ,何段階もの安全対策を講じています。
新規制基準を踏まえた島根原子力発電所の安全対策については,「島根原子力発電所の安全対策」をご覧ください。