
変電所における大型設備の取替工事

出雲ネットワークセンター 変電課 工事担当
大本 篤志2017年入社 電気電子工学科
変電所は、電圧を調整したり、トラブル時に原因箇所を除いて送電したり、電気の中継地点として重要な役割を担っています。変圧器、遮断器、断路器などの機器の耐用年数は40〜50年といわれており、変電課では、設備に不具合が発生しないよう、日頃のメンテナンスを行うとともに、計画的な取替工事を実施しています。
設計から完了まで約2年をかけて
経年化した大型変圧器を更新
島根県出雲市にある「知井宮変電所」は、出雲市⻄地区および⼤⽥市へ送電しています。設備の不具合によってお客さまにご迷惑をおかけすることがないよう、目標年数を超過した「No.1連系用変圧器」の取替工事を、2023年3月から約1年間にわたって実施しました。
変圧器は変電所の役割においてメインとなる大型の装置であり、納期も1年半ほど必要です。そのため、納期の2年前くらいから設置場所の設計に着手し、その後、機器や資材の発注、工事会社への発注、工事中に充電を止める日程の調整、行政への届出など、さまざまな準備を経て、実際の現場での工事が始まります。

知井宮変電所には2台の連系用変圧器があります。今回の工事では1台のみの取替でしたが、制御回路は2台とも取替のため、1台は充電したままで工事を実施。回路の切替時や確認試験時にミストリップや感電等が起きないよう、手順通り慎重に行うことに注力しました。
変圧器の取替工事は、私にとって初めての経験で、予定通りに進まないこともありましたが、時間をかけて準備してきた計画が少しずつ形になっていく様子を見守ることができるのは、工事担当者としての大きなやりがいです。取替が完了し、初めて「ブーン」という励磁音を聞いたときは、まるで赤ちゃんの産声を聞いたかのような安堵と喜びがありました。
NHK「解体キングダム」でも注目された
「ウォータージェット工法」を採用
工事終盤に行ったのが、役目を終えた古い変圧器の撤去です。大型の変圧器はそのままでは運搬できないため、「ウォータージェット工法」で解体を行いました。ウォータージェット工法とは、高圧水を特殊なノズルで噴射することで鋼材を切断する技術です。従来の解体では溶断していましたが、過去に変圧器の溶断中に火災が発生したケースもあり、近年は安全性の高いウォータージェット工法が、業界でも主流になっています。当社での先行事例としては、徳山変電所の変圧器解体において採用され、NHK「解体キングダム」で取り上げられました(2023.8.30放映)。このため、知井宮変電所の工事にも、他の事業所から多くの見学者が集まっての実施となりました。

今回のような大型の変圧器に限らず、遮断器や断路器など、今後もさまざまな機器の取替工事が予定されています。電力の安定供給を維持するため、業務効率化とより高い安全性を追求し、AIの活用やDXの推進など、新技術にも挑戦していきたいと思います。


