配電業務における
”Mobile Mapping System”の活用

樹野 慎平2010年入社

理工学研究科 電子情報工学専攻

Mobile Mapping System(MMS)とは、車両にステレオカメラや計測機器等を搭載し、走行しながら道路周辺の撮影・計測を行い、3次元画像データを作成するもの。当社は中国地方全域の電柱約200万本を対象に設備の3次元画像データを取得するため、NTT西日本グループの協力によって、車両のカスタマイズと計測システムの開発を行いました。すでに画像データを取得しており、画像データによる配電設備の巡視・点検業務を2024年度から開始することになっています。

CHAPTER01

最新技術導入のためのプロジェクト
「配電DX推進グループ」発足

 社会全体で労働者人口が急速に減少する中、当社でも、限られた人材が個々の能力を存分に発揮し、より専門的で高度な業務に専念できるよう、業務効率化を進めることが喫緊の課題となっています。しかし従来の配電設備の巡視・点検業務では、技術者が電柱の状況を1本ずつ目視で確認しながら「電線の地上高は十分か」「他物との接触がないか」「機器のサビや損傷がないか」などの調査を実施しています。また、お客さまから配電設備に関するお問合せがあった際には、現地へ出向いて確認・対応を行うため、多くの時間と労力を要する業務となっていました。

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 このような課題の解消に向けて、2020年7月に「配電DX推進グループ」が発足。「効率的な配電業務を実現する最新技術の導入」と「広範囲・大量に施設されている配電設備のデータを正確かつ効率的に取得」という目的を果たすため、マネージャー1名、担当者2名でプロジェクトをスタートしました。発足メンバーだった私は、業務変革の一翼を担うプロジェクトに挑戦できることが楽しみであると同時に「必ず現場業務に役立つよう達成させるんだ」と、身が引き締まる思いでした。

CHAPTER02

配電業務の未来の変革に向けて
チーム一丸となったMMS開発

 さまざまな技術調査を経て、MMSの技術を導入することになりましたが、情報システム系の業務経験のない私にとっては未知のことが多く、当初はメーカーや上司・先輩が交わす言葉も聞き慣れず、ついていくだけで必死だったことを覚えています。ただチームの関係性が素晴らしく、何でも相談でき、私の意見にもよく耳を傾けてもらえたので、常に前向きな気持ちで取り組むことができました。

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 MMSは発展途上の技術であり、メーカーからの提案を受けて概念検証を実施するも、データ取得の所用時間や、位置情報や計測結果の精度などに課題が多く、メーカーとともに検討しながら業務を進めました。その過程で感じたのは、当社としての、また担当者としての自身の思いや、やり遂げたいことを、関係者へ丁寧に伝える大切さです。
 プロジェクトの進捗状況を経営層へ報告する機会や、メーカーの技術者と協働する中で非常に深い信頼関係を築けたことなど、このプロジェクトに携わらなければできなかった経験も多く、自分自身の成長を感じることができました。

CHAPTER03

現場の発想×AI・IoTの発展で
業務変革の可能性は無限に広がる

 現在の私はプロジェクトを離れ、現場の事務所で技術者として配電業務に携わり、自分でもMMSによって取得した画像データを業務に利用しています。2024年度からは全社での活用が始まるため、普及が進めば、現場に精通した技術者から、開発段階では想定していなかった活用のアイデアが出てくることも期待しています。

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 「配電DX推進グループ」では現在も、さらなる配電業務の変革に向けて、より発展的なプロジェクトが進行しています。私が携わったMMSの導入は業務変革の第一歩に過ぎません。取得した3次元画像データにAI技術を組み合わせることで、業務の大幅な自動化の実現など、変革の可能性はまだまだ広がっていきます。私自身も、電力の安定供給に欠かせない「現場業務の効率化」という課題に、これからも向き合っていきたいと考えています。

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他社が採用していたMMSに「電柱・電線等の配電設備のデータ取得にも対応できるようカメラの角度を調整」「可能な限り配電設備のデータを取得できるようカメラの台数を増やす」などのカスタマイズをした3次元画像データを取得できるステレオカメラを車両の前後にそれぞれ2台ずつ、進行方向の左側を撮影する単眼カメラを2台設置。計6台のカメラを搭載した車両を走らせ、道路左側の電柱や設備の画像を数m間隔で撮影する。

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