島根原子力発電所 低レベル放射性廃棄物のモルタル充填に用いる流量計問題に関する調査報告について

EnerGia 報道資料

中国電力株式会社

島根原子力発電所 低レベル放射性廃棄物の
モルタル充填に用いる流量計問題に関する調査報告について

当社島根原子力発電所において判明した,低レベル放射性廃棄物のモルタル充填作業に用いる添加水流量計の校正(点検)記録の不適切な取り扱いについて,当社は社内の緊急対策本部内に専門性の高い外部第三者を含めた組織体制を構築し,事実関係の調査・確認,原因の分析および再発防止対策の検討を行ってまいりました。(平成27年6月30日7月9日お知らせ済)

本日,本事案に関する調査報告書を取りまとめましたのでお知らせします。また,報告書の内容については,原子力規制庁および関係自治体へご説明しています。

当社は,土用ダム問題に端を発した平成19年の発電設備総点検,さらには平成22年に島根原子力発電所で発生した点検不備問題を受け,原子力安全文化の醸成など,再発防止対策を進めている中で本事案が発生したことを極めて重く受け止めています。

地域の皆さまをはじめ多くの関係者の皆さまからの信頼を大きく損ねたことを,深く反省するとともに,改めてお詫び申し上げます。

当社は,同様の不正を起こさない,起こさせないという決意のもと,これまで実施してきた点検不備問題の再発防止対策等はもちろん,本事案を踏まえて策定した再発防止対策を確実に実施し,その取り組み状況については原子力安全文化有識者会議の提言を受けるとともに公表するなど,皆さまから信頼いただけるよう全力で取り組んでまいります。

また,本事案を踏まえた再発防止対策のほかに,今後,「地域・社会からの信頼あってこその原子力発電所」という我々の原点とも言うべき基本的な考え方を, 一人ひとりの社員にまで,さらに深く浸透・定着させていくため,「原子力部門人材育成プログラム(仮称)」を策定し,具体的な諸施策を検討・実施していくこととしています。

1.本事案の概要

島根原子力発電所において,発生した低レベル放射性廃棄物の搬出に先立ち,埋設処分を行う日本原燃株式会社(以下「日本原燃」という。)により実施された監査を契機として,低レベル放射性廃棄物を収めたドラム缶にモルタルを充填する際に用いる添加水流量計2台の校正記録の写しが不正に作成された事実が判明しました。
また,そのことに至る過程で,添加水流量計ほか計3台の流量計について,メーカーによる校正の正式な発注手続きが行われていなかった事実,メーカー代理店から不調があるとして戻ってきた校正が未実施の添加水流量計およびモルタル充填流量計の計2台を固型化設備に取り付け,固型化設備を運転していた事実が判明しました。

2.調査結果概要
(1)本事案に関する事実確認
時期確認した事実
平成25年8月 島根原子力発電所の担当者(以下「当該担当者」という。)が,固型化設備の定期点検の際に,添加水流量計1台およびモルタル充填流量計2台の校正を,正式な発注手続きを踏まず,メールでメーカー代理店に依頼し,引き渡した。正式発注は後日行うこととしていたが,処理を失念した。
平成25年9月 添加水流量計およびモルタル充填流量計(2台のうち1台)について,不調により校正ができず,その後返送された。当該担当者は,正式発注の未了に気付いたが,手続き漏れの発覚を恐れ,完了しなかった。また,不調の流量計の修理や校正は行わないままの状態となっていた。
平成26年1月 当該担当者は工事会社に依頼し,未修理・未校正の添加水流量計・モルタル充填流量計を固型化設備に取り付けた。
平成26年5月 固型化設備の運転が再開された(事案発覚までの充填固化体製作数:約1,100体)。
平成26年10月 当該担当者は,日本原燃による監査にあたり,過去の校正記録を基に校正記録の写し計4冊を不正に作成するとともに,このうち当該監査対象期間分の2冊を「固型化設備の管理」記録にまとめ,監査資料として準備した(当該監査は「廃棄体製作および電力自主検査に関する監査」であることから,当該資料の確認はなされなかった)。
平成27年6月 当該担当者は,日本原燃による監査にあたり,平成26年10月に不正に作成した校正記録の写しのうち,残りの2冊を「固型化設備の管理」記録にまとめ,平成26年10月にまとめた記録とあわせて監査資料として提出した。監査において原本の提示を求められたことを契機として,不正行為が発覚した。
(2)類似機器点検状況等の調査

以下について調査した結果,本事案2機器を含め点検計画実績の管理表を作成していない機器が3機器ありましたが,本事案2機器以外に点検漏れや不適切な取り扱いは確認されませんでした。

調査項目対象
類似機器点検状況(EAM以外で管理している機器) 315機器
当該担当者実施の点検業務 967機器・1,377記録
過去に搬出した充填固化体に係る確認 8,272体分
発電所で実施する外部に係る業務(申請・届出書類等) 371記録

※ EAM(Enterprise Asset Management):原子力発電所の設備に対する保全計画・実施・結果に係る情報を統合的に管理するシステム

3.組織的な関与の有無

当該担当者の一連の不正行為に関して,当該担当者は管理者等に対して報告・相談を行っていないこと,また,管理者は発覚まで事案の認識がなく,管理者から積極的に関与・黙認したような形跡も見受けられないことなどから,組織的な関与はなかったものと判断しました。
外部第三者である弁護士からは,当社への確認・聴取や,弁護士自ら実施した直接聞き取り調査の結果を踏まえ,「組織的関与が疑われる形跡は存在しなかった」との見解を得ました。

4.原因分析概要

原因分析にあたっては,「平成19年の発電設備総点検問題,平成22年の点検不備問題に対する再発防止対策に取り組んでいるにも関わらず,不正事案が発生したこと」,「組織として点検未実施を検出し,未然に防止できなかったこと」,「担当者が不正な行為を行ったこと」を問題点ととらえ検討を実施し,本事案が発生した原因を以下のとおり整理しました。

○業務管理のしくみ(原子力品質マネジメント)の問題

  • 点検計画実績管理表の未作成
  • 固型化設備稼働前の確認手順および記録の作成管理の不足

○業務運営(管理者の業務管理)の問題

  • 管理者の業務管理不足(作業の進捗を確認・把握していなかった,監査資料の確認ができていなかった)

○意識面の問題(当該担当者の不正行為)

5.過去の不適切事案に関する再発防止対策の検証
(1)平成19 年の発電設備総点検問題

「不正をしない意識・正す姿勢」,「不正を隠さないしくみ・企業風土づくり」および「不正をさせない業務運営」を柱として,コンプライアンス最優先の業務運営を掲げ,再発防止対策を継続実施してきており,徐々にその効果が表れてきています。しかしながら,本事案を踏まえると,コンプライアンス(不正をしない,ルールを守る)の意識が,一人ひとりにまで十分に浸透していませんでした。

(2)平成22 年の点検不備問題

安全最優先の発電所運営に向けて,「原子力品質マネジメントシステムの充実」および「原子力安全文化醸成活動の推進」を柱に,不適合管理プロセスの改善や業務運営のしくみの強化(EAM の活用等)を実施するとともに,原子力安全文化醸成活動に取り組んできており,徐々にその効果が表れてきています。しかしながら,本事案を踏まえると,業務管理のしくみ(EAM以外で管理する機器の点検実績の見える化)の面で対策が不十分な部分があり,また,意識面では「報告する文化」,「常に問いかける姿勢」の意識が一人ひとりにまで十分に浸透していませんでした。

6.再発防止対策

原因分析の結果から,以下の再発防止対策を策定しました。

対策項目完了予定時期
○業務管理のしくみの改善
EAM点検計画表の管理対象としていなかった機器の点検計画管理方法の改善(見える化) [ステップ1]
・点検計画実績管理表の作成 平成27年9月下旬
・EAM管理対象機器の明確化 平成28年1月末
[ステップ2]
・EAMの改良 平成28年度末
固型化設備稼働前の確認プロセスの改善 ・設備稼働前の確認手順確立等 平成27年10月上旬
・他設備への水平展開 平成28年1月末
業務に即した手順への見直し ・「固型化設備の管理」記録の手順書見直し 平成27年10月上旬
・他手順書への水平展開 平成28年2月末
○業務運営の改善
管理者によるマネジメントの改善 ・管理者責務に関する教育・研修の充実等 平成27年12月末
次年度以降も継続
・管理者の責務に係る自己評価
・監査等の体制の改善 平成27年10月上旬
内部牽制の強化につながる管理方法の改善 平成27年12月末
○意識面(不正をしない,原子力安全文化)の取り組みの改善
今回の不正事案の事例研修 平成27年10月末
次年度以降も継続
「地域に対し一人ひとりが約束を果たし続ける意識」をさらに向上させるための取り組み ・コンプライアンスに係る行動基準の策定,意識の高揚 平成27年10月末
(行動基準,具体的施策策定)
次年度以降も継続
・お客さま視点の価値観を認識する機会の拡大
適切な発注業務管理の推進 ・適切な発注業務に係る教育の実施 平成27年10月末
次年度以降も継続
・請負者に対する適切な受注業務への要請 平成27年10月上旬
7.監査班による検証

調査・分析班の活動について,手順書・資料・記録・報告書等の閲覧・聞き取り調査を行った結果,その活動計画・内容および報告は,適切に実施され,透明性・客観性が確保された妥当なものであると評価しました。

8.外部第三者による検証・提言
(1)弁護士,コンプライアンス・リスク管理専門家による検証結果

a.弁護士による検証結果
調査・分析班および監査班の活動について,「適正さ・妥当性につき特に問題視すべき点はないものと判断する」との見解を得ました。
b.コンプライアンス・リスク管理専門家による検証結果
調査・分析班および再発防止対策班の活動について,「調査・分析班による社内調査および原因分析は,適切な手段等により行われ,把握した事実を正しく説明していると結論する。再発防止対策の検討手順および結果は合理的かつ妥当と判断する」との見解を得ました。

(2)原子力安全文化有識者会議,企業倫理委員会からの提言

報告書を外部有識者等で構成する「原子力安全文化有識者会議」および「企業倫理委員会」に諮問し,意見・提言をいただきました。

【参考】これまでの主要経緯
平成27年6月26日 社内に緊急対策本部設置
6月30日 不適切な取り扱いについて報道発表
関係自治体による立入調査・現地確認(1回目)
7月9日 調査等の体制について報道発表
[本調査体制での調査は,調査計画書を策定した7月8日から実施(事実確認については,事案判明後速やかに開始)。調査の進捗にあわせ,弁護士,コンプライアンス・リスク管理専門家による確認,検証を行うとともに,報告書のとりまとめおよび再発防止対策の検討を実施。]
8月5日 原子力規制委員会において,本事案を保安規定違反の「監視」と判定
8月6日 関係自治体による立入調査・現地確認(2回目)
8月18日 企業倫理委員会開催
9月5日 原子力安全文化有識者会議開催
9月7日 関係自治体向け説明会開催

以上