第31回 自治体説明会
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《開催日》2020年6月24日(水)14時00分~16時10分
《出席者》島根県,松江市,出雲市,安来市,雲南市,鳥取県,米子市,境港市
前回の説明会(2019年12月13日)以降に開催された計21回の審査会合の概要等についてご説明しました。
〇ご説明資料
ご説明資料については,以下のリンク先に掲載している「新規制基準適合性に係る審査の実施状況一覧(時系列)」の中の該当の審査会合欄をご覧ください。(審査資料を掲載している原子力規制委員会HPへのリンクを設定しています)。
なお,説明会で使用した資料は,審査資料を一部抜粋して作成しています。
<プラントに関する項目>
○対象となる審査会合
12月24日(134回目),2月4日(139回目),2月6日(140回目),2月20日(142回目),3月5日(146回目),3月19日(149回目),3月26日(151回目),5月18日(154回目)
○主なご説明内容
格納容器フィルタベント系,火災による損傷の防止などについてご説明。
○自治体からの主なご質問
- 可搬型重大事故等対処設備の保管エリアについて,原子炉建物からの離隔距離が記載されているが,それぞれの保管エリア同士の離隔距離はどの程度か。
⇒4つの保管エリア同士についても100m以上の離隔距離を確保しており,1箇所の保管エリアに何かあっても,他の保管エリアが確保できるようになっている。
- 火災の影響軽減を図る1時間耐火ラッピングについては,今後ケーブル処理室の耐火性能を試験するとのことだが,これにより耐火性能が担保されるのか。
⇒この資料の段階では,今後試験をするというご説明をした。その後,実際に耐火炉の中で試験をし,1時間耐火ラッピングが規制基準に満足することを確認しており,基準に沿った形で対応していく。
- 水素爆発による原子炉建屋等の損傷を防止するための設備について,審査会合の中でブローアウトパネルによる悪影響として,ブローアウトパネルを閉める際に火花が発生するという発言があったが,ブローアウトパネルのどこから火花が出るという想定か。
⇒福島第一原子力発電所の事故の際には,建屋内に水素が充満し,シールドプラグという原子炉の上にある蓋のようなものが上がって落ちたことによる火花で水素爆発が起きたと推測されており,ブローアウトパネルが原因だとは承知していない。なお,ブローアウトパネル自体の構造は,パネルを鎖のようなもので固定したものであり,これが動作するような状況であれば,火花が発生する可能性は否定できない。ただし,事象として考えると,ブローアウトパネルが動作するのは主蒸気管破断事故等の場合であり,水素が発生する状況とは条件が重畳しないため,水素爆発が起こることは考えにくい。
- PAR(静的触媒式水素処理装置)の触媒について,水素ガス以外に粒子状の物質があった場合に性能の劣化はないか。
⇒通常運転時において触媒の劣化はない。また,定期的に試験で性能を確認する。原子力規制庁からは,実際の事故が起きた際の悪影響について指摘を受けており,これについては実際に国外で確認された試験結果を用いて今後説明していく。
- 格納容器フィルタベント系について,原子力規制庁からはフィルタベントの水素滞留防止対策について,構造をしっかり説明することを求められていると思う。以前,鳥瞰図を用いて説明していた時期もあると思うが,滞留しないということに対しては説明を尽くされているか。
⇒配管が上下するような箇所に水素が滞留し,爆発することがないのか,配管の鳥瞰図を用意して説明することを追加で指摘されたため,確認しているところ。窒素発生装置で系統の窒素パージを行うこと,一部の配管についてはタイラインを設けることで水素滞留対策を適切に行うことができるということを説明していく。
- 水素濃度計について原子力規制庁から指摘されているのは,他のプラントでは,水素濃度計が格納容器フィルタベント系配管の入口と出口に設置されており,中国電力でも同様に設置するようにというものか。
⇒他社の状況を確認した結果,上流は水素濃度上昇の可能性が低く,下流はしっかりと確認する必要があるということで,下流側を測定していく。窒素パージをし,パージが止まった際にはしっかりと監視できるように,適切な位置に測定装置を付けているということを評価し,説明していく。
- フィルタベントについては,福島第一原子力発電所事故の際に実施できなかった号機があったが,原因は何か。また,それを踏まえた対策は何か。
⇒フィルタベント設備は,福島第一原子力発電所事故を受け新たに設置が義務付けられたもの。福島の事故の際に実施できなかったのは耐圧強化ベント設備である。放射性物質はS/C(サプレッション・チェンバ)の水の中を通すことで十分除去することができ,耐圧強化ベントの弁を開けることができれば,放射性セシウムが格納容器内に満ちるということは回避できたが,福島第一原子力発電所2号機ではベント弁をなかなか開けることができず,格納容器の隙間から放射性物質が漏れて,相当な量が放出された。この経験から,さらに信頼性が高く,さらに放射性物質が除去できるフィルタベント設備を設置したという状況。
- ベント弁を開けられなかったことに対する対策は何か。
⇒ベント弁について,遠隔で自動操作できるものとしている。遠隔での操作ができない場合にも,リンク機構により,離れた場所から人力での操作も可能なよう,設計上の配慮をしている。
- フィルタベントについては重要な設備であるため,次回以降,時間を取って詳細に説明をお願いしたい。
⇒了解した。
- 限られた時間の中,PARで十分に水素を吸着できるのか。水素発生量,PARの処理能力等を数字で教えてほしい。
⇒設計条件としてかなり保守的に解析を行い,相当の水素ガスが発生しても水素濃度を抑制できるよう18台を設置することとしている。仮にPARが機能しない場合には,ブローアウトパネルを開けて水素を排出する。
- モニタリングポストの間隙をプルームが通過した場合の検知性について,大気安定度D(中立)で評価しているが,他の条件ではどうか。結果は保守的になっているのか。また,格納容器フィルタベント系出口配管立ち上がり部周辺の線量評価結果について,短時間のアクセス可能な線量率とはどういう意味か。
⇒モニタリングポストの間隙をプルームが通過した場合の検知性について,大気安定度D(中立)以外のパターンについても評価し,検知可能であることを確認している。格納容器フィルタベント系出口配管立ち上がり部周辺の線量評価結果について,実際にここに滞留することは想定されないため,ある条件を設定して被ばく評価をしているのではなく,定性的に記載したもの。
- PARの設置位置について,全て燃料取替階に置くと理解している。昨年12月に福島第一原子力発電所事故の分析検討会で,原子力規制庁が福島第一原子力発電所3号機の調査映像を公開し,3階の状態が水素爆発によってかなり影響を受けていたことが分かった。PARの設置位置や水素の流路は解析等が行われると思うが ,生の視点,状況を踏まえて,燃料取替階にPARを置いている考え方はどうか。
⇒福島第一原子力発電所3号機の3階の方も破損していたというのは,発生していた水素が蓄積していった結果として4階,3階の方まで水素が残って水素爆発が起きた事象だと思われる。当社の評価では,格納容器から漏れてきた水素はPARで再結合し水の蒸気になるため,水素の濃度は可燃限界以下となることをモデル化して評価している。したがって,PARがあることで3階には水素は滞留しないと評価している。
- 残留熱代替除去系について,これは他プラントの審査を踏まえて新しく格上げされたものと思うが,中国電力の方では,もともと装備していて格上げされたのか,付けようと思い計画をしていて,今回格上げになり,まだできていない状況なのか。
⇒残留熱代替除去系については,もともとない設備で,非管理区域に新たに自主的に付けようと先行の状況を踏まえて考えていたもので,先行プラントの審査の中でSA(シビアアクシデント)設備にするとなったので当社も SA設備にしていくと判断したものである。なお,まだ現場にはついていない。
- 原子炉制御室等について,今日の説明では中央制御室退避室を空気ボンベで正圧にするという説明があったが,原子炉建物の圧力はどのように運用するのか。
⇒通常のプラント運転時は,原子炉建物の管理区域は空調で微負圧にし,放射性物質が外に漏れ出ないようにしている。また,例えば燃料を取り扱っているときに燃料が落下し,放射性物質が管理区域内に出てしまったという状況になると,安全設備である非常用ガス処理系が起動し,しっかりと負圧を維持して放射性物質を出さない設計としている。
- 例えば放射性物質が外部に放出されている状態で非常用ガス処理系を動かすと,逆に放射性物質を引き込むようになると思うが,それは非常用ガス処理系でフィルタを介して放射性物質を取り除くことによって運転員を放射線から防護する運営をするといった理解で良いか。
⇒運転員でいうと,非常用ガス処理系よりも中央制御室の空調換気系の方が影響する。実際にプルームが放出されているときの対応として現在考えているのは,運転員は退避室に入っているので,プルームが通過した時でも放射性物質を除去しつつ外気を取り込んだ方(加圧運転)がその後の被ばくの蓄積がないこともあり,中央制御室を循環運転する場合と,加圧運転する場合の被ばくを総合的に検討したところ,加圧運転の方が被ばく量を低減できると考えている。
<地震に関する項目>
○対象となる審査会合
12月17日(133回目),1月21日(135回目),2月13日(141回目),3月3日(145回目),3月10日(147回目),3月17日(148回目)
○主なご説明内容
地震による損傷の防止に関する耐震上位クラス施設への下位クラス施設の波及的影響,地下水位の設定などについてご説明。
○自治体からの主なご質問
- 原子炉圧力容器スタビライザのバネ定数について,もともと大雑把に解析していたものを詳細な設定に変えられたとのことだが,スタビライザ自体の評価はこの見直しで何か変わってくるのか。Ssに対する裕度は。
⇒今回の資料にはないが,今のSs(基準地震動)で問題ないことを評価している。工事が困難な所であり,重要な部位であるので,余裕をもって大丈夫だと思っている。なお,裕度は2,3割あったと思う。
- ドレーンの状態に対応したパターンと浸透流解析上の取り扱いについて,既設の2号機サブドレーンは,砕石の中に有孔管があり,岩盤の上なので水が砕石を伝わって有孔管に入るのはイメージできる。一方,新設する方は,岩盤の中に有孔管を通して水を引き込めるようなイメージが湧いてこないが,どのように解釈すればよいか。
⇒解析上の話でこのようなモデル化をしているが,実際の設計については今後詳細に実施していくことになるので,これはイメージ図として解釈していただきたい。
<津波に関する項目>
○対象となる審査会合
1月28日(138回目),2月25日(143回目),2月28日(144回目),3月24日(150回目),5月26日(155回目)
○主なご説明内容
耐津波設計方針,津波による損傷の防止に関する指摘事項への回答などについてご説明。
○自治体からの主なご質問
- 入力津波に関して,もともと基準津波に係る境界位置での高さは,津波による水位変動量と潮位観測度の満潮位の平均値を使って11.6mを出したと思っている。入力津波の設定プロセスおよび結果の妥当性に関する資料(令和2年3月24日(第853回)P.65)においては,朔望平均潮位EL+0.58mと標準偏差による潮位のばらつきEL+0.14mを考慮し,防波壁地点での入力津波高さを11.9mとして算出していると思うが,津波防護の障壁となる地山の扱いについての資料(令和2年5月26日(第863回)P.50)では,評価水位として津波高さ12.0mという数字が出ており,入力津波11.9mとの違いはなにか。
<後日回答>
津波防護の障壁となる地山の扱いについての資料に記載の津波高さ12.0mは,防波壁とは離れた地山での水位EL+11.28mに朔望平均潮位と潮位のばらつきの0.72mを加えた数値である。
<火山に関する項目>
○対象となる審査会合
○主なご説明内容
火山影響評価に関する大山の噴火規模の想定,降下火砕物の影響評価についてご説明。
○自治体からの主なご質問
- 大山生竹テフラについて,風向の不確かさを考慮して火山灰シミュレーションを実施し,敷地における降灰層厚を評価している。この風の向きについて,敷地方向への仮想風を考慮したとのことだが,敷地の方向から若干ずれているように見受けられる。これをどう考えればよいか。
⇒敷地方向への仮想風については,実際の観測記録を踏まえて設定しているため,大山から発電所に直接向くような風向とはならない。
- 仮想風の設定にあたってのもう少し詳しい中身を教えていただきたい。
<後日回答>
審査会合資料(令和2年5月14日(第860回)P.91)に気象庁の松江および米子観測所での月平均風速とその風向を示している。その中で風向のばらつきが最も大きい8月を対象に敷地方向への仮想風を作成したのが審査会合資料(令和2年5月14日(第860回)P.97,98)である。8月の毎日9時と21時の風向風速の観測データをプロットし,全高度の風向の平均値が,大山から敷地への方向(290°)を中心に22.5°(風向を16方位に区分した際の1方位の範囲)に入る風を抽出し仮想風を作成している。したがって,敷地に向いた風ではあるが,高度,風向にばらつきがあるものを平均化しているため,層厚分布が敷地にぴったり向いたものとはなっていない。 - 大山の噴火規模に関連して,地層を調べて大山の火山灰であると判定できるのはなぜか。火山によって地層の成分が違うのか。
⇒火山によって地層の成分が異なっており,このような成分だと大山であるという知見があるので,それに基づき判別している。
- 大山松江テフラの分布域は西側になっており,非常に珍しいと評価されているが,火山灰が飛ぶのは偏西風しかないのか。天候で風向きは変わると思うが,非常に珍しいと評価されているのはなぜか。また,なぜ西側に積もっていると考えられるのか。
⇒基本的に降下火砕物は偏西風で東に積もるものと考えているが,13万年前の風が,当時どのように吹いていたかというのは正確には分からないので,西側に風が向いていたのか,規模や拡散の状況によって西側にある程度積もったのかは分からない。
以上